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第二部 パネルディスカッション 「海外展開“光と影”」




  市場拡大が見込まれる中国、生産状況は不安定 

   城下工業㈱

  代表取締役社長
   城下 徹 氏



 当社は、上田市において大正12 年に創業。製糸業から電線製造を経て現在、ヘッドホンやオーディオ機器などの音響機器、移動体通信機器等を製造する最終製品の製造メーカーです。大手メーカーの下請けとして進んできたが、メーカーの海外進出が増える中で、「価格コントロールできる企業へ」との思いから自社で商品の企画・製造・販売を行うビジネススタイルに変更してきました。

 海外展開としては、電源変換アダプター商品などのコストダウン・量産の安定化の必要性が生じたため、中国で生産委託をスタート。日本で製造した場合より2 ~3 割安くコストを抑えられます。品質は安定しているものの中国国内の生産状況が不安定であり、税金の問題や生産コストも増え経営環境が大きく変化 しています。

今後、中国では海外旅行や出張などで商品需要の拡大が見込まれます。小企業ゆえ先行投資は、ビジネスの行方がしっかりするまでできる限りしないこととしてきたが、利益を日本国内に吸い上げるために販売現地法人をつくり中国市場向けの販売を進めていく予定です。





  海外展開は事業の中長期計画の中で方針を 

   双信エレクトロニクス・マレーシア㈱

  元社長    須賀井 康雄 氏

 当社は、コンデンサ及び各種フィルタなど電子部品の設計開発・製造・販売を行っています。海外展開としては、マレーシア、中国に海外の生産拠点を持ち、マレーシアではオーディオ・一般産業機器などのフィルタ生産を行っています。

 進出の経緯としては、得意先の海外進出に伴う現地の部品調達及び低価格・短納期の要望と為替リスクの回避。低賃金の労働力確保、部材確保など製造コスト削減による競争力向上や日系得意先以外の顧客開拓のためであります。

 現在、ローカル企業との直接取引も始まり、部材調達の現地化が90%以上進んでいます。また、法人税が25%と安く投資控除及び輸出促進に関する経費関連の二重控除など外資系企業に対する優遇政策が設けられています。

 逆に輸出入手続きの増加や現地調達部材の品質維持・改善活動・受入検査の増加など業務コストが増加しています。また、作業者や技術者が技能・技術習得後に離職する人も多くいます。

 ローカル企業との競争回避のためには自社で差別化できる技術・特徴はなにか考え、短期的な対応だけでは業務のみが増加してしまうので事業の中長期計画の中で、海外展開の方針を明確にすることが必要です。





  何よりも大事なことは委託加工先との信頼関係の構築 

   株式会社シナノ

  代表取締役会長    柳澤 光臣 氏

 当社はスキーポール、ウォーキング・トレッキングポール等の企画製造販売を手掛けています。バブル崩壊後スキー産業の衰退と市場規模の縮小に伴い売上が激減し、会社存続の危機に瀕しました。

 会社の再生に向けてコストダウンや新分野への商品開発、体質の強化などに取り組む中、台湾の企業との委託加工契約という形で海外に進出。引き続きそこの中国工場でも生産を開始しました。

 現在では主力製品(ポール、杖)の売上の約4 割、生産量の約7 割が委託先の比率となっているが、多品種・少量・高価格品は自社で対応を図り住み分けしています。

 海外生産のメリットは、商品の必要とする価格・数量を選択でき、またスピーディーな商品開発と安価な開発コストで可能です。そして世界の情報の入手もできます。

 デメリット・課題としては、自社ノウハウはどうしても出ていってしまうということと、為替リスクがあります。今後海外の生産での進出はコストダウンでは将来的に難しくなると考えており、相手の得意分野を活かした商品開発、市場開発に取り組んでいきたいと思います。

 現地パートナーとは家族ぐるみの交際をしており、如何に現地に溶けこめるかが大事なポイントと考えています。





  “何のために海外に出るのか?”
                  自社としての必要性の検討を 


  エムケーカシヤマ㈱

  代表取締役社長    樫山 剛士 氏

 当社は樫山商店をホールディングカンパニーとして10 社の企業が連なるグループ企業。戦後、車の部品商から会社を立ち上げ始まったが、地域発展の為に製造業にシフト。世界40 カ国以上に販売を展開している。現在国内に3 工場、インドネシアに現地企業との合弁会社を持ち、タイに工場を新設中です。

 タイでは、インフラのサポートや潜在顧客が多く、駐在員が住みやすいなどの利点があり会社を楽に立ち上げられる一方で、日系企業同士の競争が激しかったり、人件費の高騰や労働力の確保が困難だったりしています。

 海外でないと仕事がない、みんなが出ているというイメージや流れだけで、やみくもに出ても成功は難しい。「コストダウン」「市場開拓」「新規の顧客獲得」など、その理由によって海外拠点のありよう自体が変わってきます。

 地元のローカル企業でも技術力は高くなっており、技術的な優位性は少なくなっているため、自社にとって何のために海外に出るのか、あせらずに検討する必要があります。





  中小企業でも海外を視野に入れたビジネス展開を 

  パネルディスカッションコーディネーター
     佐久ビジネスキャリアセンターアドバイザー


  金井 寛 氏

 パネルディスカションでは、上田・佐久地域の4 社の企業経営者の方々にパネリストを務めて戴き、業種・進出先・進出形態の異なる各社の海外展開の成功事例を発表して戴きました。引き続き、パネリストの方々に「海外進出に伴う国内製造業空洞化への対応(国内の本社・工場の役割)」というタイトルでご意見を伺いました。

 急激な円高、東日本大震災、国内市場の縮小といった厳しい経営環境を踏まえて、地方の中堅・小規模企業にとっても海外(とりわけ東アジア)を視野に入れたビジネス展開を考えていくことの重要性を再認識できたと思います。

 紙上をお借りして、パネリストの方々にあらためて御礼申し上げます。

END