日本の着物に似ている「ゴ」と呼ばれる男性用の民族衣裳。「ゴ」の下には「デュゴ」と呼ばれる白い襦袢を着る。(ゴとデュゴの袖は10㎝長くそれを折り返す)

念願の「幸せの国 ブータン王国」への8日間の旅から戻りました。

 羽田から空路でタイのバンコック、バングラデシュのダッカを経由して10時間程で、有視界着陸に心配しながら標高2300Mのブータンにある唯一の空港パロに到着しました。到着後すぐワゴン車に乗り、今回の旅の仲間5名の皆さんと首都テインプーまで移動しました。

 暫く前までは入国制限もあり、観光も政府の管理下にあったとの事でしたが道路、宿泊等、観光インフラが不十分であり、同時に自国文化を守る立場からも必要であったと納得しました。

現地宿泊のホテルからブータン・ヒマラヤのチョモラリ峰(7,314m)を望む。

 さて今回のブータン訪問は、日本商工会議所国際部の小野部長さんのご配慮と現地JICA(国際協力機構)の仁田所長さんのご協力により初訪問でき、限られた日程のなかで多くの事を学ぶ機会をいただいたことに感謝申し上げます。

 簡単にブータン王国の説明をしておきますが、位置的にはインド、中国等に囲まれた九州くらいの面積に約70万人の人口を持つ、小国です。

 現在は結婚式(10月13日14日)を待つ若き五代国王のジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク殿下の治世下にあります。

 私の関心は四代国王のジグミ・シンゲ・ワンチュクが1976年に21歳の若さで掲げた国是「国民総幸福度」にあります。 日本を含む、いわゆる先進国はGNP(国民総生産)あるいはGDP(国内総生産)の数字で国の豊かさや成長を計ってきましたが、私に見える、中国を始めとする経済発展モデルはヨーロッパ、アメリカ、日本も崩壊寸前で目的と手段が混同され、目指したはずの各国民の幸せは空虚でもろく、ほんの一握りの人達と官僚を除いて実現不可能と言え、現在の継続性も担保されていないように見えます。

 何かが欠けている、不安感が募る日本の現実、国際社会においても無視される内向きの政治の限界、尊敬の対象にならない国会議員、諸先生。私ども商工会議所会員は脱日本以外に先の見えないような誤解を、恐れを抱いています。

 しかし、私は誇りを持ってこの国を次世代に引き継ぎたいと念じております。その為のパラダイムシフトが必要です。そうするには、ヒマラヤの山際の小国「ブータン王国」から新しい国際社会への警鐘、提言である「国民総幸福度」の考え方を共有する事だと思います。

 日本は戦後66年間で何を得て、何を失ったのか?? 国民の「幸せ感度」を「金、物、家族の絆、他人の不幸、責任感、恥の心」などと引き替えにしてきたように感じます。

 確かにアメリカの庇護の下に戦後は始まり、自国防衛の代わりに経済発展?に投資して来ましたが、数字だけの世界第2位から転落するのも当然の事ですし、少子高齢化の大津波は想定の範囲です。にもかかわらず昔の夢の続きに浸っていようとするよりブータンに学び、今から日本人の穏やかな幸せを振り返って見た方が足下を確かにすると思います。

 GNH(グロス・ナショナル・ハピネス=国民総幸福)「社会の最終目標は国民の幸福実現にある」 このブータン発の波は今世界で真剣に研究、実践に近づいています。

 2011年7月19日、今年の国連総会で「社会経済開発の達成および測定の為に、幸福と言う視点をより一層取り入れるよう」全加盟国に求める決議が採択されました。

 さらに“幸福の追求は基本的な人類のゴールである”として物やお金で計るGNPやGDPだけを指標とすることからの脱却を求めています。

織物博物館(4 代国王の4 番目の王妃の肝いりで建てられた)で実演している少女。国民皆笑顔が美しい。

 ブータン王国滞在中、JICAブータン駐在の仁田所長さん、滞在20年を越える津川さん、佐久出身で看護師のシャヒ綾子さん、現地で結婚して幸せな青木さん、アマンコラリゾートの上村マネージャーそれぞれの皆さんの体験、見解、自らの変化、日本を見る目などゆっくり話し合う時間をいただきました。

 旅の途中訪問したブータンで最も有名な日本人で、日本農業を長年に亘り無償で指導なされた「ダショウ西岡」?さんの成果である「田畑、案山子」。築200年のドルジさんの自宅へ上げて貰っての日本への敬愛、東日本へ大震災への国民上げての祈りについての会話。

 現地小中9年制の学校にも訪問したところ、海外青年協力隊からの日本人の派遣教師が2人いらして、おひとりは長野市出身という不思議な出会いでした。

 そこは670 名の子供たちの学び舎で、朝8 時半からの全校朝礼は10 分程、経巻を唱えて始まりました。次に校長先生の訓話そして3 人の生徒が綺麗な英語でスピーチ(小学1 年から英語で授業)1 人目は世界のニュース、2 人目は我が家で有ったこと、3 人目は今日の目標を発表していて驚きました!!

 
ブータンの学校では毎朝全校生徒が校庭に集まって朝礼が行われています。


 ハンデイキャップの子供達60数名には先生の手話と上級生のケアが自然に行われていて美しい光景でした。

 最後に国旗掲揚、そして国歌斉唱、涙が出ましたが日本でもこうありたいと願います。

 今回はブータン西側の一部の観光でしたが、国土は南が標高260mからヒマラヤの麓7700mまで多様な生態系があります。国民は信頼安心できる国王の下の議会制民主主義、大家族主義によるセーフテイネット、仏教への国民的帰依、従来概念の数値では見えない幸福感をお裾分けしてくれるような美しい笑顔。

世界で唯一チベット仏教(ドゥク・カギュ派)を国教とする国家。敬虔なチベット仏教徒の子供たち。

 長くなりましたので拙文を閉じなければなりませんが、ブータンのG N Hの詳細は佐久商工会議所ホームページにアクセスしてみて下さい。例えば4つの柱は1.経済的開発、2.自然環境の保護、3.伝統文化の保護、4.良い統治。財政を支えるのは自然に優しい「水力発電のインドへの売電」これも驚きました。

 なお5代国王は新婚旅行に日本を選ばれて、11月に近くの川上村ご訪問を検討されているようです。是非、佐久にもご来訪いただきたいですね。


参照資料検索
JICAブータン事務所、西日本新聞社「幸せの描き方ブータンのGNH の今」

注:ダショウ西岡
南アジアや東南アジア地域の経済開発を推進することを目的とする経済協力(コロンボ計画)の専門家として1964 年に西岡京司・里子夫妻がパロに着任。西岡氏は1992 年に亡くなるまで、日本・ブータン友好の懸け橋として大きな足跡を残し、国王から日本人として初めて「ダショウ」の位を贈られた。

文章中の参考資料はこちら(PDF)



 
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