イスラエル通貨はシュケル
1イスラエルシュケルは約30円、5.99シュケルは約180円

 ここしばらくの世界の動きは激しく、荒々しい変化を続けています。原油、石炭、地下鉱物資源、水等々、産業の上流からのコストの過去への反乱のような暴騰、そしてアメリカの大手証券会社「リーマン・ブラザーズ」の破綻に端を発した金融市場の混乱がさらに広がる中で、金融技術が複雑化し極めて難度が高くなり、また企業・債権・ファンドへの格付け不信から不良債権が世界を漂流しています。

 このような環境の中では視野を世界に広げ、机上論だけではなく各現場での皮膚感覚をもって、経営の自己改革と柔軟な対処をしなければ生き残れません。

 なかなか農耕民族的な日本が不得意な「罠」にかかり、だまされた方が悪いといった狩猟民族型のルールが正しいとは思いませんが、その現実は否定できないのではないのでしょうか?

 イスラエルは国内人口約700 万人(パレスチナ人が200 万人、ユダヤ人が500 万人)ですから人口規模からみたら小国といえます。

 面積は日本の四国ほどの大きさしかなく、しかもそのうち南半分は砂漠であり、天候も厳しいのに「何故この地にユダヤ人は執着するのか」の疑問はどうも4000 年の歴史を遡らなければ分からないようです。
オリーブ山からエルサレム旧市街地を望む


 イスラエルといえば日本人にとっては「モーゼの十戒」の映画や、キリストがゴルゴダの丘での十字架にかけられたこと、世界でここしかない「死海」とかのイメージでしょうか?

 今回イスラエルを訪ねた理由は、私ども中小企業が不得意な新技術開発を乗り越えるために、元イスラエル外務省高官の友人が退官後始めたいくつかの企業があり、そこへ集まっている数知れないベンチャービジネス情報の中から、日本のこれからに役立つに違いないと思われる技術の説明と可能性の検討をすることでした。その中には既に特許取得レベルまで具体化しているものもありました。

 秘密保持契約を交わしてのことですから全てを明らかにはできませんが、狭い自国の市場では到底実現できないことを、世界を相手にそれぞれ個性的な発想のもとに自らの夢を具体化しようとしていることや、投資の回収を最大化することに生命を賭けて挑戦している熱い思いがひしひしと伝わり、この若い技術者達の役に立ち、同時に我が国の産業構造を変えて行かねばと思いました。

 現在のイスラエルのGNP の50%がハイテクから生み出され、さらに数年の内には70%を越して高い付加価値を生み出そうとしています。
パレスチナ人地区とユダヤ人地区を分ける分離壁
イスラエル政府がテロを防ぐ目的で2002年から建設している。


 それに比較して特に我が社も含め日本の多くの中小企業の変革の種をイスラエルの頭脳に期待することは、高い可能性と変革のスピードを早めて行くことに繋がると考えています。

 一例として、今回訪問したイスラエル最大の産軍複合企業では宇宙・航空・通信・防諜と幅広い世界最先端技術の説明から、アメリカのビジネスジェットなどの民間航空機の製造やリースアップの飛行機の改造等の現場を内緒で見せて貰いました。また無人偵察機の種類と精度を聴きびっくりすると同時に、国境を越えて24 時間常に相手国のわずかな変化も超高空から見逃さない体制ができています。こうしたイスラエルのハイテクを駆使した現状を知り、我が国の周辺の危機管理体制つまり北朝鮮、中国等の動きを観察?する静止衛星も充分でない現状との格差をどう説明するのでしょうか?

 奥歯にものが挟まった表現しかできなかったことはお詫びしますが、有志と共にこのチャンスの有る国との交流を深めて行ければと考えています。

 そのほかに「死海」が毎年1 メートルも水位が下がっていることの対策として地中海から200 キロの水路を造る案が検討されているそうです。

 それとパレスチナとの間の「壁」の現場も見てきました。10 メートルの高さの壁は誠に圧迫感がありましたし、住民にとっては大きなストレスになっているとも考えましたが、イスラエル人に聞くとこの「壁」によりテロが90%も減ったと主張していました。

 相手から言わせれば日本の「秋葉原の方が怖いぞ」と豊富な野菜と美味しいワインを飲みながら20 年来の友情を肴に言いたいことを言い合えることの有り難さに感謝したのでした。
エルサレムから死海への途中にある海抜0mの表示板


 ところでついでですが「死海」は世界遺産に登録されていて、標高800 メートルのエレサレムから車で一時間、約40 キロのところにあり、標高はなんとマイナス400 メートルと世界でのなかで最も地表から低い場所にあります。

 写真は標高ゼロの表示が砂漠のなかにあるのですが、本来海であるはずの場所なのにと思うとまさに「不思議発見」ですかね。

 
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