MonthlyNewsさく
健康コラム予防医療で元気はなまる企業に!
爪の水虫
おおくら皮フ科院長 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医 大倉俊雄
大倉院長写真

前回と前々回では冬の皮膚病をお話しましたが、今回は一年中みられる病気の一つ、爪の水虫についてお話しましょう。
爪の水虫は正式には「爪白癬(つめはくせん)」といわれ、足の水虫足白癬(あしはくせん)と原因は同じで、白癬菌(カビの一種)の感染によって起こります。多くの場合、足の水虫が先行して悪化した後、爪に病変が及びます。

爪の先端のみ侵されるタイプ、根元まで及ぶタイプ、また手の爪に感染することもあります。通常、一つの爪に感染した後、月単位あるいは年単位、時には数十年単位の経過で多くの爪に拡大していきます。また、長い経過の中で、足の水虫は治ったのに爪の水虫だけが残っている人もまれではありません。

自覚症状はかゆみがありません。これが足の水虫と根本的に違うところです。他覚所見としては爪の白濁、肥厚と変形、脆弱化があります。変形が強くなれば爪が皮膚に食い込んで時に強い痛みを伴うことがあります。(この段階になって皮膚科を受診される方も多いです。)ただし、爪水虫以外でも同様の変化が起きる場合もありえます。もし気になる方は最寄の皮膚科で受診してください。

診断は爪の一部を削って顕微鏡検査をします。白癬菌は顕微鏡でよく見えます。(ちなみにカビではない一般細菌では簡単に顕微鏡では確認できません。)治療は足の水虫のように外用剤(クリームや軟膏、液体)は効果が薄く、内服薬が中心になります。現在日本で処方される内服薬は三種類ありますが、そのうち一種類は古い薬で効果が弱いので、ほとんどの場合のこりの二種類のどちらかが処方されます。内服薬の治療法の特徴はいくつかあります。代表的にな特徴は

(1)爪の生え変わりに時間がかかるために長期を要する。(そのために途中で多忙などで治療が中断される場合があります。)
(2)ときに肝機能障害などの副作用が起き、まれに重症例がある。(そのために医療機関において血液検査を頻繁に行います。)
(3)薬が高価である。

といったことがあります。内服方法は二剤に違いがあり、一方は毎日一錠内服を続け、もう一方はパルス療法といって、一週間大量に内服し、三週間休薬。これを三回程度繰り返してあとは爪の生え変わり
を待つという方法が推奨されています。また併用不可の薬、併用注意の薬がありますので、各医療機関で確認してください。

しかしながら爪水虫は基本的には治療するべき病気ですが、緊急性を伴うことはまれで、高齢者等で他の内科疾患を多く罹患されており、内服薬もたくさん飲んでいらっしゃる場合には併用薬の問題や副作用との兼ね合いで積極的な治療を見送ることもあります。各医療機関で相談してみてください。

 


 
コラムINDEXにもどる