MonthlyNewsさく 2012.11 vol.491

MonthlyNewsさく 2012.11 vol.491 page 10/16

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佐久商工会議所会員の皆様のため特別に真壁教授からご寄稿いただいております懸念される中国経済の減速鮮明信州大学経済学部教授真まかべ壁昭夫2008年9月のリーマンショック以降、世界経済の牽引役を果たしてきたBRI....

佐久商工会議所会員の皆様のため特別に真壁教授からご寄稿いただいております懸念される中国経済の減速鮮明信州大学経済学部教授真まかべ壁昭夫2008年9月のリーマンショック以降、世界経済の牽引役を果たしてきたBRICsの経済の減速が鮮明になっている。特に、中国経済の減速が顕著になっており、世界経済は牽引役を失ったことになる。欧州経済の低迷が続いていることを考えると、当面、世界経済には下押し圧力が続くと見るべきだろう。2000年代初頭以降の経済の動きを振り返ると、当初、大規模な不動産バブルの発生によって好調な展開を示していた欧米経済が、世界を引っ張っていた。ところが、その不動産バブルが崩壊し、2008年にリーマンショックが発生して以降、欧米に代わって中国をはじめとするBRICs諸国が世界経済を引っ張ってきた。新興国の中心的役割を果たしてきた中国の経済を下支えしていたのが、総額4兆元に上る大規模な経済対策だった。中国政府の、その思い切った景気対策が中国経済を復活させ、息を吹き返らせた中国が、世界経済を下支えすることになった。しかし、経済対策の効果が永久に続くことはない。今年前半に息切れし、その効果が薄れたことに加えて、中国の最大の輸出先である欧州経済の減速が一段と鮮明化したことで、今年7 - 9月期の中国のGDPは7.4%まで低下している。そうして中国経済の減速が鮮明化すると、オーストラリアやブラジル、さらにはインドなどの経済にもマイナスの効果が波及する。その結果、BRICs諸国の経済にもブレーキが掛かっており、かつての様にBRICs諸国が世界経済を下支えする構図は大きく変化している。中国は旧共産圏の国で、実質的に一党独裁体制にある。中国では今年が10年に一度、リーダーがバトンタッチする時期に当たる。中国の権力移譲に際しては、今までも権力闘争が激化することが多かったが、今回のリーダーの交代に関しては、かなり厳しい闘争が発生したとみられる。そうした闘争は、外からはよく分らないのだが、経済政策の運営にも大きな影響を与えているようだ。それは、景気減速に伴う対応策の実施が当初の予想よりも遅くなっていることを見ても分る。今後も、中国の共産党政権内部の政治的な混乱によって、経済政策の運営が遅れるようなことになると、世界経済に与える影響は無視できない。既に、わが国の中国向けの輸出にはブレーキが掛かっており、尖閣諸島に絡む問題と相まってわが国の景気の足を引っ張り始めている。株式市場でも中国関連銘柄の値動きは不安定化している。中国の政治情勢は外から見るほど安定してはいない。景気の減速が鮮明化すると、中国では国民の中にも不満がたまりやすくなる。その不満は、いずれの国でも政権批判につながり易い。それに加えて、中国は未だに政府や官僚システムが未成熟で、政治の腐敗問題が発生しやすい。中国がそうした問題を克服し、再び、力強く拡大のプロセスを歩み始めるのは6か月程度の時間を要することだろう。欧米経済がなかなか調整局面を抜け出せず、BRICsを中心とする新興国にも大きな期待ができないと、当面、世界経済はけん引役がいない状態で歩んで行かざるを得ない。短期的に見ると、世界経済は、IMFが予想したように減速傾向が鮮明化する可能性が高い。株式や為替などの金融市場は、不安定な展開が続くことになるだろう。その後に、世界経済のけん引役を探すとすれば、その候補は米国と中国だろう。米国は、現在、不動産バブルの後始末の最中だが、最近、不動産価格は下げ止まりの兆候を見せ始めている。それが本格化し、今年年末に迫った“財政の崖”を無難に解決することができれば、一般市民や企業経営者の心理状況は改善するはずだ。米国企業経営者の不安が解消すると、労働市場にもプラスの影響をもたらすことだろう。米国経済が本格的な回復過程に戻れば、世界経済を牽引する実力は十分ある。一方、減速したとはいうものの、中国にも大きな期待がかかる。9月に認可された高速道路などの工事が進められると、それは経済全体を押し上げることになる。また、11月に予定されている共産党大会で、無事に権力の継承が完成し政情が安定すると、政府としても、必要に応じて経済政策を矢継ぎ早に打てるようになるはずだ。ただ、米中両国とも、直ぐに本格的な景気回復の道に戻るには時間が必要だろう。景気回復が目に見える格好になるまで、世界の株式・為替の金融市場は振れ幅の大きな不安定な展開が続くと見た方がよいだろう。(10)